「……葉緩? 葉緩!」
焦る葵斗の前に、一匹の白蛇が近づいてくる。
白煙とともに姿を変え、金色の瞳で葵斗をとらえる。
「そこまで」
現れたのは白夜であった。
「お前は……?」
「そうだな、葉緩の使い魔といったところだろうか」
「……俺と葉緩のことに干渉しないでほしいんだけど」
威嚇(いかく)する葵斗に口角をあげ笑う白夜。
妖艶に舌なめずりをした。
「葉緩には刺激が強すぎる。もう少し手加減してもらいたくてね」
「……だって全然振り向いてくれないから。なんでわからないのかな」
「鈍いのが葉緩だ。それでも好きなのだろう?」
白夜の問いに葵斗はふわっと微笑む。
愛おしそうに葉緩を抱きしめていた。
「うん。葉緩が好きだ。だから俺は諦めないよ」
フッと白夜は満悦し、葵斗の腕に包まれる葉緩を引き寄せる。
白夜が長い爪で葉緩の頬を突くとむずがゆそうに唸っていた。
「ま、頑張れ。だが苦労するぞ?」
「それはどういう……」
「また会おう、葵斗」
煙幕が広がる。
それが晴れたころ、葉緩も白夜も姿を消していた。
残された葵斗は手のひらに残った葉緩のぬくもりを抱きしめ、握りしめた。
「どうして主には気づいて俺には気づいてくれないの? ……葉緩」
葵斗の切なる想いはまだ、葉緩には届かない。