――ドクン、ドクン。


(なにこれ、なにこれ!?)


唇が離れたとき、葉緩の身体からは力がぬけていた。





それを葵斗が腰に手を回して支える。

余裕そうな美しい顔に葉緩は目尻をあげて睨みつけた。



「……何なんですか!?」

「やっと反応してくれた」

「お、乙女の唇奪うとは酷いです! だいだい、どうして私に気づいて」

「……匂いでわかるよ? 隠れてたの?」

「え……」


まさかの発言に葉緩の思考は停止する。

困惑する葉緩をみて、葵斗はようやく合点がいったようで満足げに微笑んでいた。



「そっか、だからこっち見てくれなかったんだ。納得した」

「ええっ!?」

「ね、葉緩。もう一回キスしていい?」

「ダメに決まって──」


カッとなるも、すでに葵斗に抱きしめられキスをされていた。

深く飲み込むようなキスに抵抗も出来なかった。



「ンンッ……はぁっ……!」


(やだ、クラクラする。心臓の音がうるさい。乱される。 ……コントロール出来ない)



ドキドキと、ふわふわと、もやもや。


色んなものが混じりあい、かき乱された葉緩の目尻に涙がにじんだ。