「にしても徳山さん、本当にかわいいな。はぁ、めっちゃ好き……」

「告白されないのですか?」

「は、恥ずかしい……。知ってるだろ? オレ、こんなに誰かに惹かれたことなかったんだって」


途端に顔を真っ赤にし、両手で隠す。

これだけモテているというのに、桐哉はまったく誰にも好意を抱かなかった。



「こ、告白とかどうやってすればいいか。あー、無理だー!」


(主様はモテるのに何故こうもウブいのか。さっさと結ばれて姫とイチャイチャしてくださいよ)


やや上から目線でため息をつき、葉緩は柚姫を桐哉に押し付ける。

とっさに桐哉が柚姫を抱きとめた。

安全圏に入ると、葉緩は俊敏に立ち上がる。



「私はまだ用がありますので、あとはお願いします」

「ええっ!?」

「……姫を任せられるのは桐哉くんだけです。お願いしますね?」

「……うん」


宝物を抱くように柚姫を抱きしめる桐哉に満足する。

これだから桐哉と柚姫の恋を応援することはやめられない。

その初々しさには中毒性があった。



「ではでは、また明日!」


二人の幸せを願い、葉緩は走り去っていった。