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やがて疲れてしまったのか、柚姫は葉緩の腕の中でスヤスヤと眠りだしてしまった。

目元が赤くなっており、たくさん泣いたことがわかる。

それでも表情はやわらかく、落ち着いているようだった。



「……ありゃ? 寝ちゃった?」

「なんなのよ、あんたたち。アタシまで巻き込まないでほしいわ」


眉間に皺を寄せて腹を立てるも、すっかり毒気の抜かれたクレアが大きくあくびをする。


「ふわぁ、なんだかアタシも眠くなってきちゃった。かーえろっと」

「クレア殿」

「ん?」


葉緩に呼ばれて振り向く。

今までクレアに向けたことのない満面の笑みを浮かべていた。


「姫の本音が聞けてよかったです! ありがとうございました!」

「……意味わかんない。帰る!」


スカートについたクッキーの食べかすをはらい、立ち上がって去っていく。

夕日に照らされた金色のツインテールがどことなく照れているように見えた。


クレアを見送り、これからどうしようかと考えていると背後から気配を感じ、振り返る。

そこには驚いた表情を浮かべ、こちらを見ている桐哉がいた。



「あれ? 徳山さんどうしたの?」

「桐哉くん……これは」

「ははっ、なんかあったの? グッスリじゃん」



二人の前にしゃがみこみ、柚姫の顔を覗き込む。

スヤスヤと眠るやわらかい頬をつついていた。


やさしい眼差しに葉緩もまた嬉しくなり、胸がくすぐられる。


「姫はかわいいということをよく知れました。私ももう少し姫に色々お話したくなりました」

「……そっか、よかったな」


基本的に葉緩は桐哉に色んなことを話していた。

主に柚姫のかわいさをスピーチするようなものであったが。

それを桐哉はいつも幸せそうに耳を傾け、聞いてくれていた。


桐哉が嬉しそうにしていると葉緩もまた嬉しい。

すっかりご褒美のようになっている頭を撫でる行為に尻尾を振っていた。


……これがあっちこっちから嫉妬の声があがる原因とも知らず。