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「な、なんなのぉ!?」


悲鳴の現場にいたのは金髪美少女のクレアだった。

廊下で尻をつき、抱きついてくる存在に青ざめていた。

泣いてクレアに抱きつくのは……柚姫であった。



「もうやだ! なんでこんな気持ちにならなきゃいけないのよー!」

「ちょっと、なんなの!? さっきから人のクッキーまで手当り次第に食べて」

「悔しかったらあなたも食べればいいのよ! ほら、一緒にヤケ食いしよう!」

「はぐっ!?」


泣きながらぷんすかし、クッキーを食べ散らかす柚姫。

顔を真っ赤にしてクレアが持っていたクッキーにまで手を伸ばし、奪って食べていた。


抱きついてくる柚姫から逃げようとクレアが抵抗していたが、柚姫ががっちりとしがみつき、挙句の果てにはクレアの口にクッキーを突っ込んでいる。

無理やりクッキーを食べさせられたクレアであったが、やがてそのおいしさに魅了されたのかうっとりとした様子で頬に手を当てていた。



「やだぁ、これ美味し~! なんだか胸がドキドキしてきた」

「でしょ? ドキドキとモヤモヤが、混ざって複雑なの。食べずにはいられない気持ち、わかってくれる?」

「わかるわかるぅ! ほんっと、むしゃくしゃするよねぇ!」

「あたしたち、同じ気持ちだったんだね。よしよし、ぎゅーしよ?」

「ぎゅーっ!」



現状の手がかりがつかめず、どうすればよいか判断に悩む。

絶句した葉緩であったが、悩んでいる時間がもったいないと猪突猛進。

設定された目標は「柚姫の守護」であった。



「姫から離れろこの不埒者がー!」

「きゃっ!?」

「葉緩ちゃんストップ!!」

「ひゃわいっ!?」



何故、柚姫が止めるのか。

ここにいるのは柚姫の恋敵・クレアである。

害を為す相手から守ろうとしているのに柚姫が大声を出すことがわからない。

状況から判断するに、クレアが柚姫に何かをしたから泣いているのだと考えていた。

抱き合う理由だけが謎のままであるが……。


あくまで信念に基づき、柚姫を想って行動する葉緩は動揺していた。



「ひ、姫?」

「葉緩ちゃんにはこの気持ち、絶対わかんないだろうからやだ! あっち行って!」

「そ、そうよそうよ!」


怒っている柚姫に首を傾げながらも便乗するクレア。

葉緩は困惑してオロオロするばかり。



「姫……なぜそのようなことを」

「うっ……」


だが柚姫が大粒の涙をこぼし、声をあげて泣き出したことで事態は好転した。