「白夜、私は……」
「うん、葉緩の気持ちはわかった。だから私も素直になろうと思った」
「……白夜?」
白夜は葉緩の長い黒髪を手に取り、指で梳く。
白い手に黒はよく映えた。
「……ずっと、葉緩と生きてきた。ただの枝だった私が、形となり、会話をした。お前の枝だと言うのに、話さなくてはわからぬことも多かった。お前の心を知っていれば、枝の伸び方は異なっていたかもしれん」
ふぅ、と静かな長い吐息が伸びる。
「今更、変えられぬ過去のこと。……私はな、葉緩とともに今を生きているんだ」
「白夜っ……」
「葉緩、私は木に戻る」
葉緩の藤の瞳が白夜を真っ直ぐにとらえる。
唇が震えたかと思うと、ぐっと強く重なった。
「……嫌だと言っても白夜は聞いてくれないでしょう?」
「よくわかってるじゃないか。少し大人になったか?」
「いいえ」
震えながらも首を横に振り、葉緩は口を開く。
噛み過ぎて唇は赤く熟れていた。
「全然変わってないです! 嫌なものは嫌ですっ!」
「葉緩……」
「……何故、枝に戻る必要があるのですか? 白夜の考えを話してほしいです」
枝に戻らず、白夜は傍にいた。
だからこのタイミングでの白夜の意志を知りたかった。
白夜は穏やかな表情で葉緩の髪を指に絡め、語りだす。
「比翼連理(ひよくれんり)、という言葉を知っているか?」