side大地

どうして俺は他の男の為に
綺麗になろうとしている依子に
手を貸すなんて言ってしまったのだろうか?

美容師の手によって
綺麗になっていく依子の姿を
前にして俺は心底後悔する。

アッシュベージュの柔らかい髪色に
ストレートパーマをかけて
サラっと肩に流れる髪の毛は
気持ち良さそうで思わず触りたくる。

待合室の椅子に座って
鏡に映る依子をボンヤリしながら
見とれていると、こちらに気付いた依子が
ニコッと可愛い笑顔を向けた。


可愛い......///


俺は赤く染まった自分の顔を
見られないように
うつむくと両手で顔を覆った。
この姿を安斉さんに
見せたくなくて
このまま箱に閉じ込めてしまおうか
さえ考えてしまう。

そして、依子のデートの話を聞いた
美容師さんはお節介にも
メイクの仕方まで教えてくれている。


依子の愛らしい少し垂れた瞳に
淡いピンクのアイシャドウを乗せ
頬にはほんのりベビーピンクのチーク。

グレイリッシュピンクの口紅を
プックリとした唇にひいたら
見違えるように可愛いくなってしまった。

美容師さん、余計なことを...

そう突っ込みたくなってしまったが
依子が真剣に聞いているので
俺はただ指を咥えて見ていることしか出来ないでいた。