その夜、孝枝が帰宅したのは七緒がひとりで夕食を済ませてお風呂から出た後だった。
聖の祖父、利幸と食事をしてから帰ると連絡はあったが、お酒の匂いをほんのりとさせて上機嫌だ。

祖母のそんな姿を久しぶりに見た気がする。七緒のお見合いが成功した喜びはもちろん、利幸との食事が楽しかったみたいだ。お互いに伴侶を亡くしているから、痛みを分かち合える部分もあるのかもしれない。


「それにしても七緒が聖さんと付き合っているなんてねぇ。縁とは不思議なものよね」


リビングのソファに座った孝枝に冷蔵庫から出したペットボトルを差し出す。「ありがとう」と受け取った彼女は、早速キャップを開けて飲んだ。


「黙っていてごめんね」


そう言う以外にない。


「もう恋愛も結婚もしないって言ってたから、これは困ったわって心配してたのよ。私だっていつまでも七緒と一緒にいられるわけじゃないからね」
「やだ、おばあちゃん、そんなこと言わないでよ」


まるで残された命が短いみたいだ。