『間もなく目的地付近です』
カーナビの声につられて窓の外を見ると、いつの間にか近所の風景になっていた。
「左手のベージュの家がそうです」
「レンガがワンポイントになってる家?」
「はい」
父を亡くした中学生のときから住んでいる祖母宅が、現在の七緒の自宅である。築四十年は過ぎているが、それほど古さは感じさせない。
ハザードランプをつけて車が停車した。
「送ってくださってありがとうございました」
シートベルトを外してバッグを掴む。ドアを開けようと手を伸ばしたら、聖に止められた。
「ちょっと待って。連絡先の交換がまだだ」
聖がジャケットの胸ポケットからスマートフォンを取り出したため、七緒もバッグから手に取る。電話番号はもちろん、メッセージアプリの友達登録を済ませた。