海岸。
 スサノオがなぎさをお姫様だっこして立っている。スサノオは足を海の中に入れていた。スサノオのふくらはぎはたくましかった。前にはエミリアが立っていた。おかっぱの髪。メイドさんの恰好。背に天使のように翼が生えていた。
 「エミリア」
 と、スサノオが呼んだ。
 「スサノオ様あ」
 と、エミリア。なぎさはエミリアを見た。
 「エミリアさん」
 と、なぎさ。
 「わあ、なぎさお嬢さまあ」
 と、エミリア。
 「実際見ると、大変お美しゅうございます」
 と、エミリア。なぎさは赤くなった。
 「お嬢さまのために手料理を用意してきました」
 と、エミリア。しかし、エミリアは何も持っていなかった。エミリアは、両手を差し出した。するとぽんと、グラタンの皿が現れた。そこにはスプーンがついていた。エミリアは片手で皿を持ち、スプーンをつかんだ。
 「はい、お嬢さま、あーん」
 と、エミリア。なぎさは一瞬とまった。
 「エミリア、なぎさが困っているじゃないか」
 とスサノオ。
 「あ、いえ、そんな」
 と、なぎさ。
 エミリアは困った顔をした。
 「御気に入りませんかねえ」
 「そんなことは」
 となぎさは答えた。
 「はははははは」
 スサノオは豪快に笑った。
 「なぎさ。魔族の食べ物だから、ヤモリの黒焼きでも入ってると思ったか」
 エミリアは笑った。
 「そういうことでしたか。安心してください。お嬢さま、普通のおこめとやさいを使った、おかゆですから」
 と、エミリア。
 「魔族とて、人間と同じものを食べている。田畑でとれた作物や、肉、卵だ」
 「そんな私、そんなつもりじゃあ」
 と、なぎさ。
 「スサノオ様あ、お嬢さまが困ってるじゃないですかあ」
 「あ、ああ、悪い、なぎさ」
 「あ、いや、別に。ただ、私は魔族に偏見など持ってないと」
 と、なぎさ。
 「別に疑ったわけだはないのだ。ただ、魔王やセイレーンが怖いのではないか、と思ったのでな」
 「ふふふふふ」
 と、なぎさは笑った。
 スサノオと、エミリアは黙った。
 「お二人が怖いだなんて」
 「え」
 と、スサノオとエミリア。