そうして恋仲となった二人を、友人たちは「これこそが真実の愛だ」と祝福した。
婚約者のいる身の上では許されるものではなく心底から喜べるものではなかったが、どうにかしてみせると請け負うヴァディムは力強く、セレニカは恋人を信じ笑って頷いた。
もちろんあからさまになった言動に嫌がらせは激化したが、ヴァディムの計らいで常に誰かがそばにいてくれたことで、身の危険を感じるようなことはなかった。
その分、王太子の取り巻きをも誑かすなどといった誹謗中傷は増したが、そんな事実があるはずもなく、愛する彼と思い合うための試練であるかのように受け止めていた。
周囲から非難されても、ヴァディムに王太子妃になってほしいと請われ分不相応だと不安になっても、彼が「愛している」と囁いてくれさえすれば乗り越えられた。これから先もそうであると、セレニカは信じていた。
本来の予定では、王太子であるヴァディムと同じ年齢であるエカテリーナ両名のアカデミー卒業を待ち、婚姻が結ばれることになっていた。
だからそれまでに婚約を破棄してみせると言って彼は奔走していた。
立場が立場のため簡単にはいかない様子ではあったけれど、同じ未来を見ていることが幸せで、愛を深めながらいつか来る日を待ち遠しく思っていた。