「それは知りませんでした。申し訳ございません」

 なんとなく面白くなくて、ベアトリスはプイッと横を向く。

 すぐにアルフレッドが立ち上がる気配がした。帰るのかと思ったベアトリスは、見送りしようと慌てて顔を上げる。しかし、アルフレットは帰らずになぜかベアトリスの隣に座り直していた。

「ベアトリス、そう拗ねるな」
「拗ねていないとお伝えしたですが」

 ベアトリスは口をとがらせる。
 本当に、拗ねてなどいない。ただ単に、のけ者にされて寂しかっただけだ。

 アルフレッドがベアトリスの髪の毛をひと房手に持つ。少し引かれるような感覚がした。

「これからは、お前にも定期的に会いに来よう」
「お飾り妃ですから、お気になさらずに」
「素直じゃないな」
「これ以上になく素直です」

 ベアトリスは真顔で答える。その返事を聞きアルフレッドは楽しげに笑う。

「お前と話していると、飽きないな」

 そして、壁際に置かれた時計に目を向けた。

「そろそろ戻らないと。打ち合わせがある」
「こんな時間からですか?」

 ビアトリスは驚いて聞き返した。すでに深夜十時を回っている。

「まあ、いろいろあるんだ」