「殿下があまりにも錦鷹団にいらっしゃらないので、心配していたのです。ジャン団長は確かに優秀な方ですが、指揮系統のトップが 全く姿を現さないというのはいかがなものかと思いまして」
「なるほど。俺の心配をしていたのだな?」

 アルフレッドはうなずく。

(あなたの心配というより、錦鷹団の団結に関する心配をしたのよ?)

 びっくりするほどポジティブな考え方の人だと、ベアトリスは苦笑する。
 アルフレッドはそんなべアトリスが考えていることにすぐに気づいたようだ。

「心配するな。錦鷹団の奴らには、定期的に会っている」
「ジャン団長以外にも?」
「もちろん」
「定期的に?」
「ああ。ほぼ毎日」

 ベアトリスは眉根を寄せる。

(ほぼ毎日ですって?)

 ベアトリスが錦鷹団に所属して約二か月が経つ。その間、アルフレッドが訪ねてきたのを見かけたことは一度もないし、ベアトリス自身に会いに来たことももちろん一度もない。

「嘘」
「本当だ。嘘だと思うなら明日聞いてみろ」

 自信満々にアルフレッドは言う。

(わたくしだけ殿下に会っていないの? だから、今日の昼に愚痴を漏らした際、みんなの反応が悪かったのね)

 ひとりだけのけ者にされていたような気がして、少し傷ついた。