「なるほど。アルフレッド殿下は他人任せで人使いが荒すぎると?」
「ええ。今度会ったら、わたくしからビシッと言っておきたいと思うのですが、残念ながら会う機会がありません」

 ベアトリスは眉根を寄せる。

「ほう、ビシッとね。なるほど。お前の気持ちはよーくわかった」

 ジャンはベアトリスの頭にポンと手を載せると、にっと口角を上げる。

「殿下には、可愛い婚約者にもっと顔を見せるようにと伝えておこう」

 サミュエルはふたりのやり取りを見つつ、「あはは……」となんとも言えないような苦笑いを浮かべたのだった。


 ◇ ◇ ◇


  その日の夜のこと。
  夜も更けたような時刻に、 部屋をノックする音がした。

(ソフィアかしら? こんな時間にどうしたのかしら?)

  忘れ物でもしたのかもしれないと思ったベアトリスは、特に警戒もせずに部屋のドアを開ける。そして、訪ねてきた人物を見て目をまるくした。

「えっ? アルフレッド殿下?」