「それで、ひとつお願いがあります」
「なんだ、言ってみろ」
「先ほどサミュエル様より、こちらを明後日の夜までに仕上げろと言付けがありました」
「ああ、そうだな」
ジャンは頷く。サミュエルに指示したのは団長のジャンなので、当然知っているのだろう。
「少し期限は延びませんか? さすがに厳しいです」
ジャンは僅かに眉根を寄せる。
「これまでの仕事のスピードを考えると、お前ならできるだろう?」
「妃教育もあるので同時並行は厳しいです。どちらかの負担を減らしていただけないでしょうか? もっとはっきり言わせていただくと、そもそもわたくしが仮初めの妃役というのはジャン団長もご存じのはずです。妃教育は受ける必要がないのではないかと」
「話はわかった」
ジャンの返事を聞き、ベアトリスはパッと表情を明るくする。
じゃあ、今後の妃教育はなしですよね?
そう続けようとしたベアトリスの発言を遮るように、ジャンが口を開いた。