しかし、側妃といっても妃は妃。それに、これまでに側妃として嫁いだ女性がのちに正妃になった例も多々ある。
つまり、ベアトリスに務まるとは思えない。
「ベアトリス。何が賢明な判断なのか、自分の立場を考えることだな。お前は王宮舞踏会で婚約者に悪行をあげつらわれて婚約破棄された。そしてあの場では男漁りをしていると嘲笑されていたところを、さっそうと現れた王太子に連れて帰られた。このまま屋敷に帰って『間違いだったようです』と言っても、困ったことになるのはお前だ」
「うっ」
痛いところを突かれて、ベアトリスは言葉を詰まらせる。
「俺であれば、お前にとって有利なように口利きをすることもできる」
にやりとするアルフレッドを見て、ベアトリスは顔を顰める。
〝有利なように口利き〟というのは、将来的にベアトリスがお飾りの王太子妃を解任されたときにコーベット伯爵家の爵位を復活できるように根回しし、更に後ろ盾をしてやるということだろう。
きっと、アルフレッドはベアトリスの家庭環境含め色々な事情を調査の上で、この提案をしているのだ。
「そもそも、これだけ国家機密を聞いておいて、ただで帰れると思っているのか?」
「……ですよね」