「魔法の使い方をわかっていないだけで、わずかに魔力があるのだろう。これの文字が読めたことが、何よりもの証拠だ」
「そんな馬鹿な……」
ベアトリスは頭を抱える。
(わたくしに魔力があるですって?)
確かに、魔力持ちはごく稀に生まれてくることがあり、その割合は貴族に多い。しかし、その数は数えるほどしかおらず、自分がそれだなんて今の今まで想像すらしたことがなかった。
「さらに、お前は通常の人間であればまず読めない異国の古代文字も瞬時に理解した。そんな貴重な人材を発見しておいて、放置しておくのは愚者のやることだ」
アルフレッドはそこで言葉を止め、ベアトリスを見つめる。
「お前には、錦鷹団の一員として補佐的な作業をしてもらう」
「錦鷹団の一員として?」
想定外の提案すぎて、めまいがしてくる。
「しかし、一介の貴族令嬢が侍女でもないのに王宮に通っていては、それこそ違和感を持たれるのでは?」
恐らく錦鷹団の団員が誰なのかは機密事項に当たるはずだ。一介の貴族令嬢であるベアトリスが王宮周辺をうろうろしていては、周囲に大切な機密が露見してしまうことになりかねない。