(そういえば、マーガレットと騎士の方はこれを見て困惑した表情を浮かべていたような……)

「その表情から察するに、心当たりがあるようだな」

 アルフレッドはふっと笑う。

「この封筒には、特別な細工が施されている」
「特別な細工?」
「ああ。機密漏洩を防止するために魔法がかけられているんだ。魔力を持つ人間しか文字を読むことができない。つまり、普通の人間が見ても何も書かれていないように見える」
「ちょっと待ってくださいっ!」

 ベアトリスは思わず声を上げて話を遮る。

「特別に発言を許そう」

 アルフレッドは言葉と視線でベアトリスに発言を促す。

「お言葉ですが、わたくしは魔法を使えませんし、魔法を見たこともありません。つまり、魔力もございません。何かの間違いだと思います」

 ──先日、ジャンがドアを魔法で開いたのを見たのを除いて、とベアトリスは心の中で付け加える。