(何がおかしいの!?)
泣きたい。なんで自分がこんな目に。
「恐れながら殿下。なぜわたくしはここに連れてこられたのでしょうか?」
「お前に一目ぼれしたからだ」
「まあ、ほほほっ」
ベアトリスは引きつった顔でアルフレッドを見返す。思わず、貴族令嬢らしからぬ乾いた笑いが漏れてしまった。
「またまた御冗談を。噓でしょう?」
「ああ、嘘だ」
「ほほう」
死んだような目をしてしまった。
しれっと言い放つ目の前の男に若干殺意が湧く。
(なんなの、一体?)
皮肉のひとつも言いたくなる。
「王太子殿下に、初対面の令嬢を誘拐する趣味があるとは存じ上げませんでした」
「なかなか言うな。助けてやったというのに」
「それに関してはどうも。でも、わたくしは絶賛婚活中でしたの。殿下の登場で、良縁が遠ざかった気がしますわ」
「それに関しては、問題ないと言っただろう」