彼の薄い唇が少しだけ動き、音を紡ぐ。


「まあ……趣味、ってやつ」


 フッとかすかな音を立てて細められた目、少しだけ上がった口角、そんなものに簡単に高鳴ってしまう私の心臓。


 彼は危険かもしれない。

 脳内で警鐘が鳴り響いている。


 彼のようなタイプはきっと、沼ってしまえば抜け出せなくなってしまうだろう。



「へぇ、そうなんだ。スポーツ?」



 たしか水谷くんはサッカー部と剣道部を兼部するという、凄まじい毎日を送っているはずだ。


 どちらかひとつだとしても相当ハードなはずなのに、いったいどこに両方を掛け持つ時間と体力と才能があるのだろうか。


 私は不思議で仕方がない。


 そんな水谷くんだから、部活は趣味に直結していると思っていたし、先ほどの言葉も部活に関することだと思ったのだけれど。



「いや、違う」


 ふるふると首を横に振った水谷くんは、私の予想をあっさりと否定した。