「だよね……変なこときいてごめん」



 ふわふわしていたところから、現実に引き戻されてしまった。


 わりといい線までいっていたはずなのに、ただの勘違いで終わってしまった。


 まあよくよく考えてみれば、本を読むのも書くのもしなさそうだし。


 彼は完全に理系だ。なんとなく。



「水谷くんは、何の話だったの? ごめんね、遮っちゃって」

「あ、いや……俺の勘違いだったらしい」

「え、どういうこと?」

「朝乃じゃ、なかった……」


 なにやらブツブツ呟きながら、安堵とも落胆ともとれない複雑な表情を浮かべている水谷くん。



「じゃあ、部活頑張ってね」



 目の前で気まずそうに視線を彷徨わせる水谷くんにエールを送り、くるりと身を翻す。


 ずしりと重い荷物を背負って、教室から出ようとした時だった。