「……り、みーり。当てられてるよ。だめだ、全然聞こえてない」


 近くから誰かが私に(ささや)いているのは聞こえるけれど、耳を通過するだけで意識まで到達していない。



 ……まてよ。

 水谷くんにはひみつの趣味があって、名高先生を知っている人しか分からない紙を見て、あんなに焦った顔をした。


 ということは、あの紙はほぼ100パーセントの確率で水谷くんと何か関係があるんじゃ…?


 そこでパッと浮かんだのは、第二の、仮説。


【この学校に、名高先生がいるんじゃないか説】



 (そんな……まさか……)



 自分で考えておいて、何度も違う!と首を振る。

 けれど、やっぱり何回も戻ってくるのは同じ答えで。



 名高先生と水谷嶺緒という人物は───…



「同じ?」

「残念、不正解です。こちらの答えは、⑥と一緒になります。計算の方法は一見同じように見えますが、若干違いますから。意外な答えにたどり着くこともあるのですよ」

「……水谷くんは、同一人物…」

「朝乃さん、良い間違いをしてくれました。これでみんなも一緒に学習できます」



 先生の言葉なんて何一つ頭に入ってこない。


 私はただ、知りたかった。
 ものすごく、知りたくなってしまった。