「あのさあ、もしその作者さんが中年のおっさんだったらどうするわけ?」
はあ、と分かりやすくため息をつく親友に、私は何度も言った言葉をもう一度繰り返す。
「だーかーら、そんなの関係ないの!私はさ羽花ちゃん、あくまでもその作者さんの小説が好きなわけであってだね」
「今さっきの発言的に、作者まるごと愛してる感じだったけどね」
「まあ……そうなんですけど」
年齢、性別、出身。
本人が明言しないかぎり、それらは包み隠されて読者には分からない。
だからこそ、最初は小説を好きになってその作者さんに興味を持っても、だんだんと作者の素性が知りたくなってくる。
無論、無理やり知りたいとは思わないのだけれど、まったく気にならないかと言われたら、私は素直に首肯できないだろう。
「まあね羽花ちゃん、もし仮にもその作者さんがおじさまだったとしても、私は一生愛すと決めてるよ」
「危ないあぶない……あたしあんたの将来が心配」
わりと真剣に心配されてしまった。
もはや心配を通り越して呆れに近いような気がするけど。