「ん…?怪しいやつから羽花ちゃんを救うという根本的なミッションを達成できてないよね、私」



重大な事実に気付いて、それではいけないと顔を上げる。



「なんか仮説が錯乱しすぎて忘れかけていましたが、羽花ちゃんは渡しません。お引き取りください」



よく言った未理、偉すぎるぞと己を褒め称えつつ、羽花ちゃんを守るようにして二人の間に立つ。


じっと彼を見つめ、彼の顔をくまなく観察しながら、相手の出方を待つ。



それにしても、見れば見るほど先生にしか見えない。


ドッペルなんちゃらっていう怖い話があるけれど、本当にいるんだね、ここまで瓜二つな人。



「ねえ、未理」

「大丈夫だよ羽花ちゃん、心配しないで。この数学教師もどきは私が退治するから」

「いやだから、その……」



後ろからもごもごと何かを言おうとする羽花ちゃん。


ここは冷静になったら終わりだと自分を鼓舞していたせいで、小さな声は私の耳には届かなかった。