「で、ついに何よ」
呆れた声音でも一応聞いてくれるようすの親友に、ぐぐっと身を乗り出して寄せる。
少し引き気味の目には、「はやくしろ」という圧が垣間見えていた。
「じつは……」
「ためるな。はやくして」
相変わらず冷たい親友にムッとしつつ、やはり聞いてもらえるだけありがたいと気を取り直して姿勢を正す。
ゆっくりと肺いっぱいに息を吸い込んで、声を出す準備はオーケー。
目の前で頬杖をついている親友にバチッと視線を合わせて。
「実はこのたび、推し作家様のデビューが決まりましたぁぁ!!」
よっしゃぁぁぁとガッツポーズをすると「おめでとー」とたいして色のない声が返ってくる。
お祭り騒ぎの私と、どうでもよさそうな親友。
対照的すぎて周りからは、私が馬鹿騒ぎしている迷惑女だと思われているだろう。
否、間違いではない。
「ちょっとこの感動やばくない?スマホ使わなくても紙媒体でいつでもどこでも一緒ってことだよ?作者の息吹を感じるよ」
「末期だからそれ」
「べつにいいよ、推しだもん。そして私はオタクだもん」
自分でも相当キモいことを口走っているのは知っている。
けれど止められないのもオタクの性だ。