水谷くんを前に、私が選んだのは後者だった。


ただし、『可愛く甘えて』の部分は除いて。



「お願いします……」

「りょーかい」



カハッと笑った水谷くんは、頭の後ろで手を組んで歩きだす。


その隣に並んで、私も同じように空を見上げた。



「なあ、朝乃」


燃えるような太陽の赤さと、カラスの鳴く声。


「また明日ね!」と弾む足音と、どこからか漂ってくる香ばしい匂い。


そんなものを感じながらゆったりと歩いている最中、ふいに届いた声。



「ん?」