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「今日はありがとな」
「こちらこそ、ごちそうしてくれてありがとう」
夕暮れの色に染まる空。
街も、水谷くんの顔も、すべてが真っ赤に染まっている。
くるりと踵を返して歩きだすと、ふいに後ろから「朝乃!」と私を呼ぶ声が聞こえた。
その後で、タタッと足音が聞こえてくる。
「やっぱ、送る」
「え?」
「もう日が暮れそうだし、一人だと危ないから」
「でも私電車だから……」と渋ると、「じゃあ駅まで」と返される。
こういうとき、本の中の女の子たちはどう言うんだろう。
付き合ってないから「大丈夫!」って言うのか。
はたまた可愛く甘えて「お願い」って言うのか。