なんとも可愛らしくない会話だ。
悲しくなってくる。
「朝乃、甘いもの好きでしょ?」
「ううん、あんまり」
ふるふると首を横に振ると、ニヤリと悪戯っぽく笑った水谷くんは、私の額をコツンと弾く。
「嘘だね。毎日お弁当後のチョコレートを幸せそうに食べているのを俺は知ってる」
「なにそれ、ストーカーか何か?」
「なんとでも言ってくれ」
この人は不思議な人なんかじゃない。
変人だ。
パクッとクレープを頬張ると、頬が落ちるかと思うくらいの甘さが口内に広がる。
ああだめだ。美味しい。
やっぱり甘いものを前にして嘘をつくなんてできない。
「美味しいでしょ?」
「……うん」
素直に頷くと、満足げな笑みが降ってくる。
悔しいけれど美味しいものは美味しいんだ。
美味しすぎるクレープが悪いよこれは。
という責任転嫁を心の中で行いながら、私は夢中でクレープを食べたのだった。