「ていうか、もしこれが本物のキャラ設定だったとしたらネタバレじゃん…! むりむり、読めないよこんなの!!」
素早く折り畳んで、鞄の奥深くに滑り込ませる。
これで少しは安心だ。
もし適当な場所に捨てようものなら、誰が拾って見るか分からない。
みんながみんな、私のような【節度のある】オタクだとは限らないのだから。
拾ったのが私でよかった、本当に。
「おーい、未理! そんなとこで何してんのー?」
「あ、羽花ちゃん!」
ぶんぶんと手を振って駆け寄ってくる親友は、どこか嬉しそうだ。
「一緒に帰ろ」
「あれ、部活は?」
「今日は顧問が体調不良で、奇跡的に休みになった」
なるほど。だからそんなに嬉しそうな顔を。
「そっか。じゃあ一緒に帰ろう」
拾った紙のことは、なんとなく羽花ちゃんには言わない方がいいような気がして。
鞄の奥で眠ったまま、当分の間出てくることはなかった。