「え、じゃあなに────」

「水谷くん、この問題は」


 訊こうとしたところで、先生の声が飛んできた。

 当てられたのは水谷くん。


 話をまったく聞いていなかったので、私が当てられていたら確実に終わりを迎えていた。


 すっくと立ち上がった水谷くんを、ビクビクしながら見上げると。



「1です」

「おっと……相変わらず途中式全部飛ばしましたね」



 涼しい顔をして答えた水谷くんは、先生の苦笑を受けて、静かに着席した。



 そう。この人は頭もいいのだ。

 色々な意味で、この人は不思議な人。


 頭脳明晰、運動神経抜群、眉目秀麗な不思議っ子。



 きっと小説のなかのキャラクターでいうと、自信をなくしたヒロインを救う、ちょっと風変わりな天才くん、ってところだろう。