「えー……いや、やっぱなんでもない」


適当に言い訳が思いつかなくて、なかったことにした。

今の俺は滑稽だろうな……。


「いえ、お世辞でも嬉しいです!」

「っ……」


だから、その笑顔はちょっとキツイ……。

自分が自分じゃないみたいだ。


「それでは、ありがとうございました」


そう言って女は去って行った。

しばらくの間、俺は呆然としていた。

そして決意し、女とは違う方向に歩き出した。 


「おっ、海崎どうしたんだ?」

「すみません、やっぱり志望校明日まで待ってもらえますか?」

「はっ……?」


戻ってきたかと思えば急にそんな事を言った俺に担任は驚き、困惑している。

ま、当然だけど。


「……分かった。だが、明日に必ず持ってこいよ」

「はい」