聞くつもりは微塵もなかった……。

ましてや女……それでも俺は、聞こえてくるソイツの声に歩みを止めた。

自分でも自分の行動が理解できない。

……でも、確かに言えるのは……ソイツの声は澄んでいて、とても聞き心地が良かったという事……。

女に対して、そんな事を思ったのは初めてだ。

そして、……俺の周りにいる女とは違うという事……。

俺は今、ドアの横に立ち止まっている状態。

その女も帰ろうとしているのかカバンを肩にかけ、俺の方に歩いて来た。

厳密に言うと、ドアに向かってだけど……。


女の顔は視界に入れたくないが、声の主が気になってしまい、下げていた頭を上げた。


「っ…………」


……一瞬息をするのを忘れた……

女嫌いの俺でも分かるほど、ソイツは整った容姿をしていた。

立ち尽くす俺の視線には気づかずに通り過ぎて、職員室から出て行った。