「そ、そんなにも嫌わなくたって。ひどいですわリュアン様……私はただ、あなたのお役に立てるから、頑張ろうって……」  

 顔を俯けて悲しそうな顔をし、涙までたたえてみせる。よくよく見ればかすかに口元が震えているのだが、ささやかすぎて今のリュアンでは気付けそうにない。

「お、おい……そんな顔をするんじゃない。べ、別にそこまで言ってないだろ。俺はただ、あんたのことがちょっと苦手で、嫌な気分にさせても可哀想だからと思ってだな。な、泣くな、頼むから」

 あのリュアンがポケットから真っ白なハンカチを取り出しておろおろしている。その仕草を見てキースは込み上げる笑いを噛み殺すのに苦労した。なにせ、自分より余程巨大な魔物に敢然(かんぜん)と立ち向かう彼が、なんとも言えない困り顔で両手を出しては引っ込め、終いには今にも泣き出しそうな表情でちらちらとこちらの方をを見てくるのだ。

(たまりませんね、これは……ククク)