セシリーはそこで詰まった。父親が、キースに「娘を自由に使ってやってください」というようなことを言っていたのを思いだしたのだ。しかし詳細を話す前に、それはせっかちな女性に肯定と捉えられてしまった。彼女はセシリーの両手を強く引く。

「やった、丁度よかった! 洗濯物の回収は私がするから、あなたベッドメイクできる!?」
「で、できますけど……」

 商家の娘だったセシリーは一通りの家事くらいは教えてもらったので、つい勢いに負け、こう言ってしまったのが運の尽き。

「よっしゃ助かる! それじゃ一階の、扉に番号付いた部屋の一番目から時計回りに新しいシーツ掛けて行って! カートはあそこ!」
「でも私、お手伝いさんじゃ……」
「急ぎだから任せたわよ! うおりゃぁぁぁぁ…………!」

 女性は瞬く間に暴走カートを引きつれて消えた。昨日はあんなに上品に対応してくれていたいうのに、なんという様変わりだろうか。意外な一面は誰にでもあるのだなと、セシリーはリュアンを一方的に決めつけていた自分にちょっとだけ反省した。