「くそっ……ああわかった、もう何も言わん! ただ……リュアン君、父親として頼むよ。必ずふたりで戻ってきてくれ。私は妻にろくな結婚式を挙げさせてやれなかったから、娘の花嫁姿くらいくらいはしっかりこの目に焼き付けていつか報告してやりたいんだ」
「……は……はい、必ず!」
 
 リュアンはそんなオーギュストの言葉に赤くなった後、しっかりと背筋を伸ばし、返事をしてくれた。そのかしこまった様子に満足そうに大笑いすると、オーギュストはふたりの背中を押してクライスベル邸から送り出す。

 エイラの事は……オーギュストには、しばらく旅に出る言っていたと嘘を伝えてある。彼もなにかを察したのか小さく頷いただけで、その後寂しげな背中を向けてじっと考え込んでいたから、きっと父にとってもエイラの存在は大きなものだったのだとセシリーは思った……。

 最後に、町の出入り口にある馬車乗り場に出向くと、整列した兵とレオリン、そしてキースの姿があった。

「来たな……。では準備がよければ声を掛けてくれ」

 こちらを気遣ってレオリンは隊列の先頭に歩いてゆき、セシリーたちはキースと向き合う。