「くそぉっ!」
「そん、な……」

 エイラの手をかすめた光剣を消し、跪いたレオリンが地面を手で叩いた。フレアは壁に囲まれたある方向へ畏れの視線を向ける。

 セシリーにもその気配は感じられた……。遠くで、とてもよくないものが……とてつもなく怖ろしいものが蠢き始めてしまった。

 体を包む闇の腕が解ける。見ればエイラは、口元に笑みこそ浮かぶものの……流れる血もそのままに、肩でする息をこらえようと必死だった。

「ふ、ふふ……。これで……目的は果たせましたわ。後は滅びを待つだけ」

 これまで部屋中に描かれ、歯車のように組み合わさり回転していた魔法陣の動きがひとつずつ止まり、次々と消えてゆく。異様な静寂の中、彼女は一度だけセシリーに目をやった。