「いいえ……団長は強い人です。キースさんもにも言われたんでしょ。あなたには、どんな苦境にあっても立ち上がって、人に手を差し伸べようとする心の強さがあるって。ちゃんと私のことだって、何度も助けてくれたじゃないですか」

 あの時セシリーはリュアンが自分たちを探してくれているだろうということを迷いもしなかった。少なくともセシリーにとって彼はとっくに信頼するに値する人物となっている。

 しかしセシリーが瞳に意思を込めながらそれを伝えても、あくまで彼は謙虚に受け止めるだけだ。

「そうじゃない。俺はいつも、ラナが……あいつがそう望んだから、そう在らないといけないって必死に言い聞かせるだけで精一杯だったんだよ。そんな俺を見下して笑うやつも大勢いた。でも誰一人知り合いもいなかったこの国で、逃げることもできずもがいていた俺にヴェルナー侯爵やキース、騎士団の皆が力を貸してくれて……俺に居場所を作ってくれた。もっと強くなれって、背中を支えてくれた」

 彼は胸に手を添えて、静かに瞼を閉じる。言葉にせずとも、今彼がひたむきに多くの人たちへの感謝を捧げているのは伝わってくる。そして彼は、一心にセシリーを見つめ、こう語りかけた。