意外とすんなり着いて来てくれたリュアンに詫びながら、セシリーは彼と騎士団の敷地内を抜けて行く。夕方に近いこの時間だと大分人影も減り、幸いあまり出待ちの淑女たちにも見咎められることなく、門を出ることができた。

 二カ月近く前、初めて騎士団に来た頃は肌寒かった記憶があるが、もう四月も終わりに近づき……そこかしこの街路樹や花壇で鮮やかな花々が爛漫と咲き乱れ、新たな命の芽吹きを祝福している。

 セシリーは少し俯き加減で、前髪の隙間からリュアンの顔を覗いた。
 つい数日前から、変な意識が先に立って、彼のことを真っ直ぐ見られなくなっている。

 かといって、彼が隣にいることが嫌というわけでもない。
 安心するような、ちょっと不安なような……そんな気分。

 そんな中、彼は少し話したいからと家路を遠回りし、セシリーをメイアナの喫茶店に連れてゆく。

「ご無沙汰してます……」
「あらま……セシリーさんとリュアンさん! ようこそおいで下さいました……」