しかしそれはただの霜ではなく、それに触れた地面や体から、凍結現象がどんどん広がってゆく。幸い範囲を調節しているのか、セシリーたちの場所には振って来ない。

 恐怖し逃走に移ろうとする兵士たちにキースはにこやかに宣言する。

「あまり動かない方がいいと思いますよ。痛い思いを味わいたくないのならね」

 無理に動いたせいで皮膚に裂傷でも負ったのか、悲鳴を上げながら動きを止める彼らの足元はどんどん地面から這い上がった冷気に固められてゆく。

「殺意を持つ者に対し私は加減するつもりはありませんよ。さあ、このまま心臓まで凍らせられるのがお好みでしょうか?」
『や、やめてくれ……! なんでも話す、だから命だけは……!』
「では、ここまででやめておいてあげましょう」

 キースがパチンと指を鳴らすと、凍結現象はそこで止まる。

「さて、この騒ぎだ。そろそろ巡回の騎士団も到着する頃でしょう。さあ、あなただけは着いてきて洗いざらい話していただきますよ」

 直立した姿勢で半分凍付けになったベジエ子爵にキースは歩み寄ると、彼の体に縄を巻く。