「ええ、ご迷惑をおかけしました……ありがとうなぁティシエル、まさかお前に助けられるとは……成長したな」
「へへ……私だってお爺ちゃんの家族だもん!」

 仲睦まじいふたりのやりとりを見ている間もなく、ティシエルと両側からルバートを支えて建物から出ると、今まで防戦に徹していたキースが振り向き笑う。

「やりましたね! さすがセシリーさんとお友達だ。ベジエ子爵、これであなたの罪は明らかなものとなりましたが、反省し、大人しく縛に就くつもりはありませんか?」
『黙れ、どうせ貴様らはそこから出ることはできんだろう。その猪口才な魔法が終わるまで矢を射続けてやる!』
「仕方ありません……ならば私も少し本気を出しましょう。『水精よ、冷たき氷の世界へ誘い、背く者の意思すら凍らせん』」

 静かな詠唱が終わり、春めいた日差しの中、屋敷の周りだけ霜が舞い降り始めた。

『ふん……こんなものがなんだと……? ぬ……ぬわぁぁぁ!』