セシリーは身に付けていたポーチの奥で硬いものが指に触れたのに気付く。
 それはしばらく前にラケルの紹介で彼の師、ジョン・オーランドと出会った時、彼がお土産で持たせてくれた試供品の飴玉。

 なんと、これは保存性を向上させるために作成した魔力ポーションのひとつなのだ。

「ティチ、口開けて!」
「ふぇっ? えっ、なにこれ苦い、うぇっ……集中が乱れるよぉ、なんでこんなことするのぉ?」
「うるさいっ、黙って嚙んで、呑み込む!」

 涙声でえづくティシエルに強引に指示し、がりごり咀嚼音が響いた後、彼女の手元が再び力強く瞬いた。

「ま、魔力が戻って来た! 滅茶苦茶不味かったけど……いけそう! ありがとセシリー!」
「どういたしましてって……キースさん、リルル、大丈夫!?」
「安心しなさい、誰も通しはしませんよ!」
(大丈夫さ、帰ったら七面鳥の丸焼きが待ってるんだもんね!)