「私が壊すよ! お爺ちゃんをこんな所に閉じ込めるなんて許せない! 少しだけ時間をちょうだい!」
「彼女、ウチのお抱え魔道具作成師なんです! キースさんの腕輪を作ったのもこの子なんですよ」
「なるほど……ならば手早くお願いしますよ。そろそろ人が集まってくる。緊急事態ならやむ負えませんが、なるべく人に向けて魔法は使いたくない……『水球よ……旋転し仇なす者を退けよ』」

 キースは謎の魔導具を囲い込むように、半球状の水のバリアを張り巡らす。際どいことに飛来した弓がこちらに向かって弾かれた。相手も遠慮するつもりは無さそうだ。

『ふはは、王国の手のものだか知らんが葬ってやれば証拠も残らん! 者ども、行け!』

 屋敷から出て来て、頭の上で剣を振り回し号令を掛けているあの男がベジエ伯爵なのだろうか。騒ぎになる前にこちらを始末し、どこかへ逃亡するつもりなのかも知れない。

 セシリーは額に汗を浮かべ真剣な表情を見せるティシエルの手元を覗き込む。壁の一部に溶接痕が見つかり、彼女はそれを今熱を発生させる道具で慎重に外したところだ。

 外壁の一部が外れ、中側の動力部だろうか。歯車群や、魔力を流す金属の線のようなものが見えた。