(ラナさん……!)

 不思議な夢を見た時から……自分の心の中で誰かが呼んでいる――そんな気がしていた。わずかに意識を反らせば気づけなくなってしまうほどのささやかな、けれど懸命に誰かを想う声。

 目を閉じ……無明の闇の中で繋がれと、セシリーは指先に意識を集中する。真っ白な砂粒ほどの光がそこへ生まれ、それはずっと遠くから近づくように、だんだんと大きくなり……やがてセシリーの視界をすっぽり包み込む。

(……ありがとう。少しだけ、あなたの時間をちょうだいね)

 心の中で頷くと意識は温かい光と溶けあい、混ざりあった。



 そして……大きく目を開くとセシリーは後ろで泣いているマーシャの手を取る。

「マーシャ、行くよ! あなたはゼル様を止めて!」