「双方、止めよ!」「止まって!」

 レオリンとレミュールが制止の合図を送るが、しかしふたりはそこで剣を引かなかった。互いの剣が体を掠め、叩き、血が流れてゆく……。

「あ、ああ……やだ」
(どうしたら。きっと私じゃ止められない。今ここにいなきゃいけないのは、私じゃないのに……) 

 隣のマーシャが、震え、怯えたように声を詰まらせて首を振るのを見ても、ただ祈ることしかできないセシリー。

 ――呼んで……。

 その耳に微かな残響をともなって、声が届いた。

 ふいに、手放さないように身に付けていたあの手鏡からほんのりと熱を感じ……セシリーはそれを取り出す。鏡面に映るのは自分の姿だが、微かに光で出来た誰かの輪郭が重なって見える。それに指を触れ、セシリーは懸命に心の中で呼びかけた。