「私はどちらの味方でもないよ……娘の味方で勝った方の味方だ。強いもので無ければ娘は任せられんしな」

 胸を張って勝負を見届けようとするオーギュスト。そんな三人の近くにひとりの女性が駆け寄ってきた。

「……セシリーさん」
「マーシャさん。ごめんなさい……」

 マーシャは不安そうな表情でこちらを見ている。詳しいいきさつはきっと聞いていないのだろうが、セシリーの口から話すことは躊躇われた。こんなことになってしまったのも……自分のせい。本来ならばあの場に至るまでにリュアンたちに自ら伝えるべきだった。私はファーリスデルには帰らない……だから兄弟同士で争うのはもうやめて欲しいと。

 セシリーは思っていた。ジェラルドは弟であるリュアンのことを、最初に出会った時も、そして今も仇敵のように憎しんでいるように話すが……あんな風にラナを悼み、レミュールたちを慈しむ気持ちを持つ彼のような人が実の弟を心配していないはずがないと。

 彼は心の奥底ではまたリュアンと……昔のように語り合いたいと思っているのではないか。幼い日々の、ラナと三人で笑い合ったあの時に戻って――。