俺は必死に祈った。
 
 もし神という存在があるなら、きっとラナを救ってくれるはず――なぜなら彼女はこれからこの国を、笑顔の絶えない国に変えてくれる、そんなかけがえのない人なのだから。

 そう確信していたのに。

 ――ドッ。

 ずいぶん軽い音だったように思う。
 体ごとぶつかる勢いでラナの背中に押し当てられた何かが、赤い目をした人影にそのまま引き抜かれた。黒ずんだナイフは落ち、噴き出した赤いものが地面を濡らす……。

 そして、ラナが足から崩れ落ちると同時、自由になった俺は地を蹴った。

『貴様!』