……そして創立祭当日。

『ラナ、久しぶり。いや、これからはお義姉様って呼ばないといけなくなるのかな? それとも王妃様か?』
『もう、レイったら嫌味ね。そうだとしてもまだまだ先の話よ。それに公式の場でなければこれまで通り呼んで欲しいな、なんだかむず(がゆ)くなっちゃうもの』

 月の聖女・兼王妃候補筆頭たる立場のため、多くの護衛が同行する中俺はラナと顔を合わせた。久々といっても、ものの一年ほどだというのに彼女は見違えるように綺麗になっていた。でも明るいその笑顔だけは出会った頃と変わらず――いつまでそうあって欲しいと願う。

 飲食は禁じられたため、観劇や在校生の開発した魔道具等の展示物を見ながら、知り合いや世話になった教師に挨拶して回るラナを俺はずっと見ていた。子供の頃は仲良く手を握って歩いたり、一緒に食事をしたりと、姉弟のように過ごした彼女の隣にいられるのが本当にこれで最後なのだと思うと……その姿をきちんと記憶に留めておきたかったのだ。

 だが、そんな感傷めいた行動がひどく軽率なものだったと、直後俺は思い知らされることになった。祭りの最中に悲劇は訪れ……示されたのは、最悪の結果だった。