俺自身もいつまでも彼女に依存している訳にもいかない。ふたりの姿を出しにして、取り残されたような気持ちを払拭すべく、日々学業に打ち込んだ。生きてきた中で一番長く感じる一年が過ぎ、ラナは立派に卒業して離宮へと入っていった。

 校内から彼女の姿が消えた後も、ラナ伝いに出会った友人たちは変わらず俺を気づかってくれ、この時もその存在の大きさを思い知った。大いに助けられ、卒業時に宮廷魔術師としてひとつの研究室に配属されることが内定すると俺は……少しは成長した自分を見せて安心させてやろうと、年に一度催される魔術校の創立祭に彼女を招待する。彼女のおかげで、何もできなかった自分でも、誰かに認めてもらえるようになった……だから精一杯の感謝を伝えようと心に決めて。

 もちろん彼女の方もそのままでいるはずが無い。人づてに彼女が今まで誰にも扱えなかった、初代聖女のものだという手鏡の封印を解き……真なる月の聖女としての資格を得るに至ったと聞いても、俺の中にさしたる衝撃は無かった。

 きっと遠からぬうちに、彼女は兄上と結ばれ王妃になることが決まるのだろう。そう考え、俺は個人的に会うのはこれで最後にしようと決めた。一番の親友をこれから義姉などと呼ばなければならないと思うとなんだか悔しいようなおかしいような気分で……。でも、どんな環境でも彼女は自分も周りもきっと笑顔にしてみせるだろう……そう思うと心の整理は付き、少しだけこの国の未来が楽しみになった。