(そうだあいつ、リルルも着いて行ってるんじゃないか! あいつ、きっちりセシリーを守ってくれよって頼んだのに……あの時みたいに大きくなって一緒に逃げられなかったのかな?)

 何かあればその身を盾にしてでも守ってくれると、ラケルは兄弟分の白い狼を信頼してはいるが、相手は軍隊で下手に抵抗すれば命が危ない。そう思うと、暴れずに捕まっていてくれた方が……。

(ここで、こんなことを考えていても仕方がないけど……ふたりとも大丈夫かな) 

 後ろ手を組んだ上に乗せた頭の中にふたりの笑顔がくっきりと浮かんだ。無事でさえいてくれれば、どんなことがあろうと絶対に連れ戻す……その意志を持ってここまで来たのだが、ラケルには分からないことが多すぎる。

(なんでだろう……気分が、むかむかする)
 
 隣のリュアンの静かな姿に頼もしさよりも苛立ちを覚えてしまう自分が嫌で、ラケルは胸を押さえ、そっと顔を背けた。