「ま、待ってくれ……俺は頼まれただけなんだ! 前金をもらって、あんたらとか、青い長髪の眼鏡の男とか、そんな奴らがいたらある場所へ連れてこいって! オ、オーギュストっておっさん、知ってんだろ!?」
「なるほどな……」
 
 リュアンはそれを聞いて剣を下ろし、ラケルは慌てて男の襟首を掴んだ。

「ね、ねえあんた、セシリーは一緒に居なかった!? 栗色の髪と灰色の目をした女の子なんだ、見かけただろ!?」
「知らねぇっての……ひとりだったよそいつは!」
「ラケル、落ち着くんだ。まずはオーギュストさんに会おう。話はそこでする」
「団長……。はい、わかりました……」

 自分だけが事態についていけていない……部外者のような疎外感を感じたように、ラケルはその手を力なく離す。

 男はリュアンたちを寂れた酒場へと連れて行き、奥の小部屋へと通し、しばらく待つように言う。

 無言で瞑目し、腕を組んで待つリュアンの隣に座りながら、ラケルはセシリーへの心配が先に立って大事なことを忘れていたのを思い出した。